2009年08月29日
植物の謎:接木・挿木で育つのは、なんで?
医学会ではクローン細胞の研究や万能細胞を作り出す研究が花盛り
です。
動物においては有性生殖が一般的で、いわゆるクローン(無性生殖による)を作り出すのは困難とされていますが、植物においては、むしろ無性生殖は一般的で、栽培においても、日常的に用いられている手法です
いつも、読んでくださり、ありがとうございます
例えば挿し木、接木などがそれにあたります。
「挿し木」とは、何枚かの葉と茎の一部がついた苗を直接土に刺す方式で、例えば茶、バナナ、パインアップル、みかんなどは一般的にこの手法で栽培されます。
何故かと言えば農作物は大きさや糖度を安定させる必要があるからです
無性生殖ならば、遺伝子に変化は生じないので、安定した品質が確保できるというわけです。
日本人におなじみの冬の甘い
温州みかん
が栽培できるのも無性生殖の方式で栽培されているからです
※パイナップルの挿し木の様子。
また「接木」は異種の植物を台木(根と茎の下部)にして、葉と茎を差し込む方式で、スイカ、キュウリなどはこの栽培法が用いられます。
接ぎ木の方式を取ることで病気に強くなるので、この栽培法が用いられます。

※スイカの接木の様子。
これらは無性生殖の中でも特に栄養繁殖と呼ばれます。
なんでや劇場では有性生殖の勉強をしたときに卵子は細胞分裂に必要とされる栄養をため込むため巨大化した、ということが解明されましたが、この植物の栄養繁殖の方式では、茎や根が栄養細胞としての役割(卵子が栄養を供給するという役割)を担うという事なのです。
植物においてこの方式が可能なのは、例えば茎の部分(成長点)が万能細胞(=どのような体細胞にでもなれる細胞)に戻ることができる、もしくは万能細胞が茎や根の部分に多数残存しているためだと思われます。動物系ではこの細胞の万能性は生殖細胞を除けば、ミミズやヒトデあたりにしか残存していません。ミミズやヒトデが2つにちぎれても再生されてゆくのは、体中に万能細胞が残存、しそれが分裂を重ね様々な体細胞に分化していくからと言われています。
この動物と植物の違いはどこから生まれてきたのでしょうか?
恐らくその違いは、植物は自前で栄養を作れること、つまり餌を追い求める必要がないこと。
それに対して、動物は自前で栄養を作り出せないこと、つまり餌を捜し求める必要があり、そのために運動する必要があったことに起因すると思われます。
つまり動物系の細胞は高次の運動性を獲得するために、体細胞の機能分化を著しく進めていく必要があり、高次の機能分化(細胞間の役割特化)を進めていった結果、万能性を捨てていったということではないかと思われます。有性生殖は、環境の変化に対して変異(多様化)を促進させるシステムですが、動く必要のない植物は、変異のシステム(有性生殖)を獲得しながらも、安定した種の保存(無性生殖)の優位性をもなお保持し続けたということなのではないでしょうか?
次の問題は、この無性生殖(栄養繁殖)において分裂開始のスイッチがどの様に作動するか(万能細胞がどのようにして分裂を開始するかもしくは普段はどのようにして封印されているか)にあります。細胞分裂の謎に更に迫るためにも機会をみて是非アプローチしたいところです
- by member
- at 19:55




comments
農業の世界では無性生殖は当たり前ですが、一方で自然の摂理を勉強すると、動物と植物のその大きな違いに驚かされます。
農業の現場だと「スイカは接木するもの」「イチゴはランナーを伸ばさせて増やすもの」と固定化して考えてしまいがち…
なんでそうなったのか?
それが一番いい方法なのか?
さらに考えていくこともできるんだな、と気づきました。
また、改めて植物の生殖の多様性にびっくりしました☆
>動く必要のない植物は、変異のシステム(有性生殖)を獲得しながらも、安定した種の保存(無性生殖)の優位性をもなお保持し続けたということなのではないでしょうか?
なるほどです。逆に無性生殖の優位性を保持し続けた植物に対して、運動エネルギー=代謝能力向上に向かった動物は、免疫強化と共に無性生殖能力を無くさざるを得ない方向に進化したという事でしょうか?どちらも戦略上必要だったのでしょうね。
以前マニアの間で流行した黄色い胡蝶蘭(品種は忘れた)
は、成長点培養による海賊版が横行して、海賊版は品質が悪かったそうです。
欲しかったのですが、かなり高価でした。
また、蘭ではエンブリオジェニックカルスに、病原体の毒素や除草剤を入れて、
生存した細胞を選別するなどの改良もあるそうです。
皐月は同じ木にいろいろな花を咲かせるのですが、
赤い花の枝を挿し木すると赤ばかりになるが、
白い花の枝の場合は両方咲くと言われます。
バラは枝変わりの新品種もかなり登録されているようです。
クローンだからといって、まったく変化が無いかと言えばそうでもないようです。
かと思えば兼明親王が987年没なので、
それ以前から八重の山吹がすべてクローンであることが知られていて、現在まで安定しているのですが、
同じバラ科でもソメイヨシノは最初の実生の木から200年程度だと思いますが、
病弱になってきて、そろそろ限界などとも言われています。
クローンだからといってそれほど安定しているわけではないようです。
ところで、クローンでないもの。
植物の場合は、日本では実生と言いますが、
動物ではなんというのでしょうか。
将来クローン人間が多くなってしまうと、
“おまえは誰のクローンだ!”
“俺は実生だ!”などという会話があるかもしれません。
長々とすみません。