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2009年08月13日

『蛍の光』は環境・人類を救えるか?

卒業式の歌のことではありません。夏の風物詩といえば、ホタル。以前はちょっとした小川があれば、その美しい光の乱舞を見ることができた日本人には馴染みの昆虫ですが、実はこのホタルの光、生物学だけでなく様々な分野で注目を浴び続けているのです。それは何故かというと・・・・・

flight.jpg

この涼しげな写真はやまびこ山荘さんからお借りしました


その秘密は、クリックの後で m030
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■ホタルはなぜ光る?~卵も幼虫も蛹も光る
ところで、ホタルが成虫の時以外も光ることは意外と知られていません。ホタルは卵も幼虫もサナギも光り、オスもメスも光ります。むしろ、卵~蛹までは大半の種類が発光するが、成虫になると昼行性の種の多くは発光を止めるようです。

firefly-child2.jpg firefly-sanagi2.jpg
発光するホタルの幼虫(左)と蛹(右)

ホタルが光る理由には諸説あり、これ!というものは定まっていません。外敵から身を守るための警戒色説、夜行種では生殖行動のサイン説があります。中には多種の雌の発光を真似て寄ってきたオスを捕食するのに使うものもいるそうです。


■地上最高のエネルギー変換効率をもつ発光メカニズム
ホタルの光が注目されている理由は、地上で最もエネルギー効率の良い発光メカニズムだからです。白熱灯約10%、蛍光灯約20%、LED約30%に対し、「冷光」と言われるホタルの光はエネルギーの88%を光に使い、無駄な熱を殆んど出さないと言われてきました。最近の研究で88%ではなく実際は41%とも言われていますが、それでも地上最高の発光効率を誇ります。そのメカニズムとは・・・。

 発光反応の基質であるルシフェリンが酵素であるルシフェラーゼの触媒作用によって、生物の体のなかに広く存在するATP(アデノシン-三リン酸)と反応します。生じた中間体がさらに酸素と反応し、発光体であるオキシルシフェリンが生成します。
 オキシルシフェリンはエネルギーの高い状態にあり、安定した状態になるためにエネルギーを光として放出します。
(SPring-8が明かす ホタルが発光するしくみ)

luciferin.jpg
上の図はこちらから


ホタルの腹部にはこのルシフェリンやルシフェラーゼを持つ「発光細胞」や発生した光を反射させる「反射細胞」があり、昆虫の呼吸器である気門~気管から送られた酸素が発光のスイッチになります。

hakkou.gif
ホタルの発光細胞。図はこちらから


もし、この仕組みが応用できれば、究極の省エネルギー型照明ができる、というわけです。


■研究・応用はどこまで進んでいるのか?

①ルシフェラーゼの大量製造
ホタルの発光メカニズムの応用には一つの壁がありました。発光体ルシフェリンとATPは化学合成で大量生産できるが、酵素であるルシフェラーゼはホタルからしか獲れなかったのです。

ルシフェラーゼの大量生産に世界で初めて成功したのは、日本のキッコーマンで、1988年のことだった。ゲンジボタルのルシフェラーゼ生産遺伝子を、大腸菌に組み込んで大量に増殖させることが可能となった。キッコーマンのニュースリリースによると、1gのルシフェラーゼを従来の方法で抽出するには、約10万匹のホタルが必要だったとのことだ。(ホタルについて)

この技術は、ATPを指標にした細菌検査システム等に応用されています。


②ホタルの光の色を変える
世界のホタルのほとんどの種は黄緑色の光を発しますが、中には赤みがかった光を発する変異種がいることが分かっていました。光の色が変わる仕組みも最近分かってきました。

 発光前のエネルギーの高い状態から安定な状態に変化するとき、その差が大きいと放出するエネルギーが大きく、発光は波長の短い黄緑色になります。しかし、変異型ではオキシルシフェリンが動く自由度があるために、エネルギーの一部が光ではなく熱(振動)として無駄使いされる結果、発光色は波長の長い赤色になるのです。 (中略)   ホタルをはじめとする光る昆虫たちは、発光酵素のアミノ酸配列のわずかな違いで発光色の違いを演出しているのです。 (SPring-8が明かす ホタルが発光するしくみ)
fig3.png
288番目のイソロイシン残基の大きさの変化による発光色の変化


③他の生物に発光細胞を取り込む

 1980年代に、カリフォルニア大学の研究陣がホタルから発光酵素の遺伝子を取り出し、これを遺伝子工学的な手法でタバコの葉に導入することに成功した。 そしてこの葉の組織を人工培養して完全な植物体に育て、光るタバコの苗を作り出した。こうしてホタルは、たとえ機能の一部とはいえ、「植物に変わった虫」の第1号になった。
mus157.jpg
光るタバコの葉

ホタル以外にも、ルシフェリンで発光する生物はクラゲなど幾つかの種類がいます。岡山大では、発光クラゲの蛍光遺伝子をラットのガン細胞に組み込むことに成功。ガンの転移を確実に追跡する治療法への応用が期待されています。

lighting-cancer.jpg

発光する癌細胞。写真はこちらから

究極のエネルギー効率を持つホタル等の生体発光メカニズムは、まずは食品や医療分野でその実用化が進んでいるようです(むやみやたらに動物の細胞を光らせるのはどうかという気もしますが)。一方、照明などの省エネルギー化を目指した工学分野での応用は、かなり先のようです。それだけ、驚異的な生命体の仕組みを人間が工学的に再現することは一筋縄ではいかないということなのでしょう。

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comments

ホタルって、幼虫も光るのですね!
初めて知りました!

ホタルの光があれだけ多くまるのは、反射細胞があるからなんですね。
エネルギー効率の良さにびっくりです!

ホタルの光って、医療や食品分野で応用されているのですね。意外でした。
ホタルの光にヒントを得た省エネ照明ができるのを、楽しみにしています!

  • さんぽ☆
  • 2009年08月17日 16:12

さんぽ☆さん

普通、私たちはホタルの成虫しか見ないので、幼虫も蛹も光るのは意外ですよね。
次の記事のセミもですが、昆虫の人生(虫生?)の中で、実は成虫の時間はほんの僅か。
交尾して卵生むためだけの、純粋な生殖存在です。あー、だから翅があるのかな。

> ホタルの光にヒントを得た省エネ照明ができるのを、楽しみにしています!

「ホタルック」とかいう名前の省エネ型照明器具はあるみたいですが、
ホタルの発光メカニズムを応用したものではないみたい。

実際にできたら、ぶよぶよした光る人工細胞の塊りみたいなものになりそう・・・。

  • s.tanaka
  • 2009年08月18日 01:23
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