統合サイト るいネット
RANKING
ブログランキング・人気ブログランキングへ にほんブログ村 科学ブログへ
NEW ENTRIES
ARCHIVES


2009年06月24日

サイトカイン・ストームってなに?

787px-Spanish_flu_death_chart.png

1918年に世界的に流行したスペイン風邪は、全世界で感染者6億人死者4000~5000万人に及んだといわれています。当時の人口が18億人程度なので、約1/3の人が感染したことになります。感染者は15~35歳の若年層に集中し、死亡者の死因の多くは、ウイルスの二次感染による急性肺障害によるものでした。
当時、インフルエンザウイルスに関する知識も研究技術も確立しておらず、なぜその様な強い病原性をもっていたのかは医学界でも永らく不明なままであり、また、当時流行したウイルスは現存していませんでした。
ところが、日本の研究機関「科学技術振興機構」が、1918年のスペイン風邪ウイルスの遺伝子を、公表された遺伝子配列を元に再構築し、人工合成することに成功しました(詳しくはコチラ)。
この研究によって、スペインかぜで多くの人が死亡した原因のひとつに、ウイルスに対する自然免疫の異常反応(サイトカイン・ストーム)であることが確認されています Shocked


いったいどんな異常反応なのでしょうか m050


続きを読む前に、応援クリックお願いします m026
ブログランキング・人気ブログランキングへ
にほんブログ村 科学ブログへ

まずは、用語の押えから m030


m121 サイトカインってなに?
サイトカインとは細胞から放出されて、免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用・細胞増殖や分化の調節作用など、特定の細胞に情報伝達するタンパク質の総称をいいます。

免疫とは、細胞内に異物が進入した際に、異物を非自己として認識し防御する働きのことをいい、免疫機能を担う白血球・マクロファージ・好中球・リンパ球(T細胞・B細胞・その他)などの各細胞が共同作業を行う為の相互作用を司っているのがサイトカインです。


主なサイトカイン
☆インターロイキン (Interleukin (IL)
(白血球が分泌し免疫系細胞間の調節機能を果たす。IL-6はマクロファージを刺激して急性反応を誘導し、IL-8は好中球の特定の方向への移動を誘導する機能をもつ)
☆リンパ球が分泌するものをリンフォカインという。
☆単球やマクロファージが分泌するものをモノカインということもある。
☆インターフェロン(Interferon; IFN)
(ウイルス増殖阻止や細胞増殖抑制の機能を持ち、免疫系でも重要である。)
Wikipedia

※インターロイキン(IL)とインターフェロン(IFN)はサイトカイン・ストームの説明でも出てきます。


m122 サイトカイン・ストームってなに?
体内に免疫を持たない新型ウィルスが進入すると、体内で過剰免疫反応を起こすことがあります。サイトカイン・ストームとは、免疫系への防御反応としてサイトカインが過剰生産されアレルギー反応と似たような症状を起こし、最悪の場合死に至る作用のことをいいます。


m123 免疫反応におけるサイトカインの役割
通常の免疫反応について、具体的に見ていきましょう。
マクロファージは異物(病原体)を捕らえて取り込み殺しますが、その際にT細胞に対して異物の種類を提示するという形で「警告」を発します。T細胞はその警告に基づきB細胞に抗体生産を命じますが、その命令を伝えるのがインターロイキン(IL-6)です。ところがB細胞が充分量の抗体を作るまでにはタイムラグがあるので、マクロファージはその間のつなぎとして病原体を食い殺す作用を持つ好中球を呼び寄せます。この際にもIL-6が働きます。注目すべきは、これらはいずれも感染初期の反応であり、もし免疫反応が順調に働いているならば、IL-6は徐々にその役目を終え減少していくと考えられます。


m124 ウイルス感染に対する免疫反応
ウイルスは細菌と異なり自分だけで分裂増殖できません。何故ならウイルスとは遺伝子を蛋白の殻で包んだだけの存在であり、遺伝子に基づいて新たな体を作り出す機能を持っていないからです。そこでウイルスが増殖する為には生きている細胞内に入り込み、自分の遺伝子を設計図として細胞に新たなウイルスを作らせる必要があります。インターフェロン(INF)は、細胞に作用して、この「ウイルスの遺伝子に基づいて新たなウイルスを作る行為」をブロックする働きがあります。したがって通常の免疫反応であれば、INFが増加し、ウイルスの増殖が抑えられることになります。


m125 スペイン風邪における、いわゆるサイトカイン・ストームの発生
それではスペインかぜにおける過剰免疫反応(サイトカイン・ストーム)の発生について見てみましょう。


スペインかぜでは、通常の免疫反応であれば、ウイルスが退治されれば減少するはずのインターロイキン(IL-6)が増加し、ウイルスの増殖の抑制を促すインターフェロン(INF)が増加していることが実験からわかりました。
特に、生体内のIL-6濃度が感染局所(インフルエンザでいえば「肺」に当たる)で異常に増加しています。
%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%8F%8D%E5%BF%9C.gif
%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%8F%8D%E5%BF%9C%EF%BC%92.gif


画像は科学技術振興機構さんからお借りしました。

・ヒト由来インフルエンザウイルスと比較して、1918年のスペイン風邪ウイルス(1918)に感染したサルは、(a)一部のタイプI型のインターフェロン(ピンクの点線で囲まれた部分)の発現増加が見られない
・反対に炎症性細胞の一つである好中球などを刺激するIL-6(青の点線で囲まれた部分)は発現増加
・(b)インフルエンザウイルス感染に対する抗ウイルス反応に重要な遺伝子群(黄色の点線で囲まれた部分)は、発現増加が見られない(遺伝子発現量:減少、変化なし=黒、増加


m126 サイトカイン・ストームによる肺の病状
では、サイトカイン・ストームが肺に起こった場合には、具体的にどういう状態になるのでしょうか。

肺の中は極めて細かい部屋(肺胞)に分かれており、その壁は血管が密集しています。取り込んだ酸素と二酸化炭素を効率的にガス交換するため、血管と大気が殆ど直に接触しており、しかもその表面積を増す為に内側が細かく仕切られています。
IL-6が過剰増加すると、急性炎症反応を引き起こし、肺胞の内側に水分や好中球そのものや好中球の死骸などが溜まります。したがって、その部位ではガス交換が出来なくなり、いわゆる「肺炎」を引きこします。
サイトカイン・ストームが発生するとこの状態が更に強く起こり、呼吸困難、最悪の場合は死に至ります。

%E8%82%BA%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%8C%96.jpg


(a)正常なサルの肺
(b)ヒト由来のウイルスを接種したサルの肺
(c)(d)1918年のスペイン風邪ウイルスを接種したサルの肺

画像は科学技術振興機構さんからお借りしました。


m127 スペイン風邪で死亡したのが若年層なのはなんで?
以上の研究から、「スペインかぜはなんらかの原因で体内にサイトカインストームが発生し、急性肺障害を引き起こして多数の死者を発生させた」というのは確かだと思います。


しかし、ここで疑問が残ります。
スペインかぜの死亡者が、通常のインフルエンザであれば死亡することのない15~35歳の若年層に集中したのはなぜしょうか m050


よく引き合いに出されるのが、若年層ほど免疫が活発化しやすく、過剰反応を引き起こしやすいということですが、どうもすっきりしません。


一つの説として、当時感染者に使用されていた解熱剤(NSAIDs:非ステロイド抗炎症剤系解熱剤)によって、サイトカイン・ストームが起きたという説があります。
アスピリンはスペインかぜが流行する3年前(1915年)から一般用薬剤として市販され急速に使用されるようになりました。当時解熱剤として大量のアスピリンが使われたとされる記録があり、アスピリンを使用した人と使用しなかった人の死亡率は30倍もの差があるという調査もあります。これが正しければ、当時第一次世界大戦中という状況を鑑みて、若い軍人などがインフルエンザ対策として多量のアスピリンを使用し、副作用としてのサイトカイン・ストームが起きたという仮説も立てられます(現在WHOではアスピリンの18歳未満への使用は制限)。
いずれにせよ、本来ウイルスに対抗すべき免疫反応が過剰反応を起こし、自らの体を蝕むという皮肉な結果は変わりません。


生物が本来もつウイルス(病気)への抵抗力をいかに正常に発現させるか?
見えない敵に対抗する上で忘れてはならない視点ですね。


m281


(参考サイト)
戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CRESTタイプ)
研究課題名: 「インフルエンザウイルス感染過程の解明とその応用」
研究代表者: 河岡 義裕 東京大学医科学研究所 教授
"Aberrant innate immune response in lethal infection of macaques with the 1918 influenza virus"
1918年のインフルエンザウイルスがマカカ猿に致死的な感染をした際に見られた異常な自然免疫反応

Kikulog 「(いわゆる)サイトカイン・ストーム

NPO 法人医薬ビジランスセンター
『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No122
2009A/H1N1 インフルウイルスでパンデミックは起きない

trackbacks

trackbackURL:

comments

サイトカイン・ストームについて詳しく書いて頂き本当にありがとうございます。

私が求めていた、解答はこのようなものでした。

スペイン風邪の犠牲者の多くは、アスピリンの副作用だと私も思っておりました。

そして、今回のメキシコのインフルによる犠牲者も若い年齢層に多い(20~40代)もこのNSAIDsの影響によるものだと思っております。

余計なことですが、文章中に第一次世界大戦が第二次世界大戦となっていましたね。
弘法も筆の誤りといったところですね(笑)
でも全体の文で第一次と分かります。

どうもありがとうございます。こらからも楽しみにしております。よろしくお願いします。
かじか

  • かじか蛙
  • 2009年06月26日 01:22

>かじか蛙さま

コメント&ご指摘ありがとうございます。
お役に立てて嬉しいです。
インフルエンザ問題を調べれば調べるほど、ウイルスの脅威は人類自らが作り出しているように思えてきます。


かじか蛙さまも非常にインフルエンザ問題にお詳しそうに見受けられます。
このサイトはみなで作っていくサイトですので、会員登録されてみてはいかがでしょう?


ご指摘の点は、早速修正させて頂きました。
ありがとうございます。

  • andy
  • 2009年06月26日 10:47

「かじか」でございます。
お礼を言うのは私の方です。ありがとうございます。

「インフル問題に詳しい」とのお言葉まで頂戴しまして、大変恐縮しております。

私は、本当に無知な人間です。
そのせいか、自分の関心事の一つでも分かった時は、大変うれしい思いもしております。

インフル騒ぎのおかげで、貴ブログを知ることが出来ました、豚フル君ありがとうって…言うのは、感染死亡された方々に不謹慎でした…。


会員のお誘いも、重ねてありがとうございます。
会員にならせていただくのは光栄ですけれど、会員と非会員の違いすら分かっていない私でございます。 

 かじか蛙

  • かじか蛙
  • 2009年06月26日 23:47

会員・非会員の違いは、当サイトに記事を投稿できるかできないかの違いです。

サイトの設立主旨については、一番上の記事を是非読んでいた頂きたいと思いますが、端的に言えば、「様々な現代問題を解決するために、従来の定説や専門家の言説に縛られる事なく、素人が追求していく」サイトです。

かじか蛙さまが今までに追求された内容を記事として投稿されると、多くの方の役に立つものになるのではないか、と思った次第です。

是非ご検討&今後とも応援よろしくお願いします!

  • andy
  • 2009年06月27日 23:58

なるほど!会員の件について、理解できました。

私は知識のストックが乏しいので、ここで学ばせて頂きたいと存じます。

文章もさることながら、画像やイラストもあり、楽しく勉強させて頂いてます。

今は、本ブログをずっと遡り、そこからゆったり現在までカヌーに乗った気分で流れて見たいと思っております。よろしくお願いします。

  • かじか蛙
  • 2009年06月28日 22:17

様々貴重なるご指導ありがとうございます。とても理解しやすかったです。以前研究生活でアメリカにいたとき、その類の研究していた友人がノックアウトマウスで奮闘していました。さて、先生、現実に戻りますが、脳血管障害、心疾患等々でアスピリン製剤=100mg・81mgの2種類がありますが、アスピリンの影響はこの量では、大丈夫でしょうか?新型インフルエンザが疑われた場合には休止が望ましいのでししょうか?初歩的な事ですみません。ご教示くださると幸いに存じます。以外とお若い方でも御内服が必要な方々がおられます。

  • あゆせんせい
  • 2009年08月20日 10:54

>あゆせんせい

コメントありがとうございます。
ご質問に関して、私は医療の専門家ではないので、より現場に即した回答を求めるのであれば、事前研究+仮説をもって、医師又は学会に相談されるのがよいと思います。

以下、補足的見解として回答しておきます。

アスピリンの副作用は、ライ症候群との因果関係で、82年に米国で報告されています。日本でも15歳未満は原則使用禁止とされていますが、現状、日本国内の研究では明確な因果関係を見つけられていないようです。それは、米国と日本では薬の使用量が大きく異なることが要因のようです(米国は多量に薬を使う)。
ですので、81mgと100mgの2種類の薬の使用量によって、明確な副作用が出るかどうかはわかりません。そもそも、サイトカイン・ストームは免疫の過剰反応が原因ですから、患者の体調・心理状況を鑑みて判断するのが良いと思います。


【アスピリン関連ガイドライン】
http://www.bayaspirin.jp/antiplatelet/guideline/index.html

  • andy
  • 2009年08月26日 20:24

先生ありがとうございます!確かにどのくらいの量が脳血管障害の再発予防に、血小板凝集のコンロトールに良いのか?、歴史的にいろいろな臨床試験が行われ現在の量となりました。私自身参加して行った試験ではないため失礼な質問でした。アスピリンジレンマ。COX1.2.3・・古い言葉になりましたが、温故知新?ということでどうか御勘弁下さい。ある疾患にて大学生に内服して頂いています。その他にも沢山の方々が内服しておられ、診療のおりもしも聞かれた時には、より良い返答できるように今後も勉強します。感謝。

  • あゆ
  • 2009年08月27日 11:29

コメントを入力してください

いつもありがとうございます。

またインフルのことで疑問が湧いてきました。
今騒ぎの(豚)新型インフルは肺でウイルスが増殖するって言われていますが、本当なのでしょうか?
従来の季節性インフルとは違うとは思えないのですが…
かじか

  • かじか
  • 2009年09月18日 08:13

今晩は!
今朝の質問ですけど出勤間際だったためあせってしまい、
「コメントを入力してください」の部分まで入れてしまいました(笑)。大変失礼いたしました。
改めましてご意見を享けたまわりたいと存じます。


☆(豚)インフルは肺でも増殖すると言われたりしていますが、実際のところどうなんでしょう?
私には信じられません。

どうか教えていただけませんでしょうか?
よろしくお願い申し上げます。

  • かじか蛙
  • 2009年09月18日 21:57

今晩は!
今朝の質問ですけど出勤間際だった為あせってしまい、
「コメントを入力してください」の部分まで入れてしまいました(笑)。大変失礼いたしました。
改めまして、ご意見を享けたまわりたいと存じます。


☆(豚)インフルは「肺」でも増殖すると言われたりしていますが、実際のところどうなんでしょう?
私には信じられません。

どうか教えていただけませんでしょうか?
よろしくお願い申し上げます。

  • かじか蛙
  • 2009年09月18日 21:58
comment form
comment form