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2008年11月05日

卵割期の細胞周期

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先日の記事で、多細胞生物における細胞周期は増殖因子と呼ばれる分裂を開始させる因子と、分裂を制御する細胞周期エンジン(サイクリン・CDK)によって統合されていることが分かった。
リンク
この細胞周期が原核生物でどのようになっているのか?は大変興味深く、これを調べていくことで、初期生物の細胞分裂システムに近づくことができる。
  
その中間形態として多細胞生物における初期細胞分裂=卵割(受精卵の細胞分裂)について調べてみました。 m030

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カエルの卵が受精すると約90分間1回目の分裂が起こり、それ以降は約30分ごとに11回分裂が繰り返されて、6~7時間後には約4,000個(2の12乗)の細胞でできた胚になる。卵割の間は卵の大きさは変化せずに細胞数だけが増える。細胞周期の進行はあらかじめ卵に蓄えられたタンパク質とmRNAだけで行われる。卵割の細胞周期はS期→M期→S期→M期→・・の繰り返しで、2種類のサイクリンと1種類のCDKだけが細胞周期エンジンとしてフル稼働する。
 
12回目の分裂が終わったところで、突如として細胞周期に変化が起こる。これは卵に備蓄されていた母方の物質が底をつき、新しくできた接合子(卵+精子)の遺伝情報を使って新しいタンパク質の合成が始まる時期と一致する。これを胞胚中期の遷移(MBT)という。MBTを境に、それまでS期とM期しかなかった細胞周期にG1期とG2期が出現する。細胞周期の進行は大幅にスピードダウンし、同調的だった分裂が胚の部分によってまちまちになる。細胞周期エンジンにも変化が見られ、このMBTの時期を境に細胞周期が初期胚型から体細胞型に移行したといえる。
【これだけは知っておきたい 図解 細胞周期】より引用                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

                    
注目点1
・受精後から第1回の分裂が開始する90分間は細胞内でなにが起こっているのか?
仮説→細胞分裂が始まる条件としては、なにかの増殖刺激が与えられないと始まらない。つまり受精後の90分間に卵に蓄えられたmRNA(+蓄積されたリボゾーム)が増殖刺激因子となるタンパク質を作り出し、その因子濃度の変化をサイクリン・キナーゼといった細胞周期エンジンが受け取り第1回目の分裂が開始されるのではないか。
つまりこの段階ではRNA(+蓄積されたリボゾーム)だけでタンパク質を合成していると考えられる。

注目点2
・12回目までは中心体の複製はどのようになされているのか?
仮説→ここまでの段階では、卵+精子の遺伝情報=成体後DNAは働いていないとしたら、中心体はそれ自身独立して分裂し、12回分の核分裂を引き起こしている。

注目点3
・核小体は初期卵割には不要?
以前の 記事 に

>さらに、核小体のない卵母細胞を体外で受精・発生させることで、卵母細胞の核小体が初期胚発生進行に必要かどうかを調べました。発生を開始した脱核小体卵は、核小体を持つ対照卵と同様にタンパク質合成能およびDNA複製能を有していましたが、数回の卵割後に初期胚発生を停止しました。
この異常が脱核小体操作による核のダメージによって起こるものでなく、核小体を持たないことに起因することを確認するため、核小体のない脱核小体卵に卵母細胞の核小体を戻し、体外で受精・発生させました。核小体を戻した卵母細胞は、正常に受精・発生し、この胚から産仔が得られました。つまり、卵母細胞の核小体は胚発生を正常に進行させるために必要であることが実証できました。

というものがある。

仮説→核小体の大きな役割は、mRNAからタンパク質を作り出すリボゾームを作り出すことにあり、タンパク質形成に必須の器官です。これが12回目までの細胞分裂には不要ということは、その間は新たなタンパク質をつくることはせず、卵由来のストックされたタンパク質だけで分裂を行っていることを意味します。
逆にこの12回目以降は、卵+精子の遺伝情報=成体後DNAと相互作用をはかりながらリボゾーム→タンパク質=増殖因子や制御因子をつくりだし複雑なチェック機構が働き出す→細胞周期の大幅なスピードダウンとなっていると考えられます。


◆まとめ
・多細胞生物といえども初期の細胞分裂(卵割)の段階では、DNA複製(DNAポリメラーゼ)と細胞分裂(中心体や微小管)だけに限定された機構が主要に働いている。
・そして12回目以降増殖因子や制御因子というタンパク質を作り出す(=G1、G2期の発現)ために必要なリボゾームは核小体から作り出されている。
・中心体を構成するタンパク質はDNAにコードされておりず(=中心体自身が遺伝情報を持ったRNPと考えられる)、また、核小体(核小体低分子RNA)はイントロンから生じている。 リンク リンク

⇒卵割という細胞の初期分裂を見ていく中でも、中心体・核小体・RNAがDNAという遺伝情報とは切り離されて働いているのがよく分かります。やはりこれらの細胞器官は生命の起源に近いところにあると推測されます。 m030

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comments

なるほど~多細胞生物の卵割を見ても、中心体・核小体・RNAがDNAという遺伝情報とは切り離されて働いているんですね。
そういう風に見ると確かに、生命の起源はDNAよりも中心体などの方にありそうな気がします!

仮説をたてて生命の起源を推測していくってワクワクしますね☆

  • 不良ポニョ
  • 2008年11月12日 04:34

不良ポニョ さんコメントありがとうございます。
一般的な細胞分裂と卵割期の細胞分裂を対比して調べてみるだけで、ずいぶんいろんな違いがわかりまね。

ところで先日生物学者の卵くんと話をしたのですが、生物の研究をしていると例外だらけという事実に常に直面するようです。セントラルドグマのように教条的にこれだと決め付けることは、分かりやすい反面、それ以上の追求を止めてしまう危険性があることを話してました。

調べれば調べた分だけ例外や新たな疑問が出てくる、かといってまったく分からない=統合されないままでは何も固定化されず追求が深まることもない。

生物進化(適応原理)は「変異と安定」に貫かれているといわれますが、勉強すること、追求することもまったくこれと同じで、ある思考に固執してしまった時点で外圧適応不能な硬直状態に陥ります。

生物史の勉強では「ここまではわかった、でも新たにこの疑問が出てきた」⇒だったらそこを追求してみようという繰り返しを学ぶことの繰り返しであり、「変異と安定」に貫かれたて適応原理そのものの思考だと感じています。

  • chai-nom
  • 2008年11月16日 21:21
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