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2008年08月15日

RNAワールドの名残り?核小体とはどういう組織か

nucleolar.jpg
核小体「仁」という、なかなか趣を感じさせる名前も持つ細胞核内の組織です。これがいったい細胞の中で何をやっているか良く知りませんでしたが、調べてみると、生命の起源にも繋がりそうな非常に面白い事実が・・・・。


今回は、この核小体の興味深い働きについて紹介します。


m118 続きはクリックのあとで m030
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■核小体は、RNAの製造・加工工場


核小体は核の中に1~数個存在する非膜系組織。次のような要素で構成されています。


・リボソームタンパク質
・リボソームRNA遺伝子が集積したDNA領域
    ※核小体形成領域(NOR:nucleolar organizer region)という
・核小体低分子RNA(snoRNA:small nucleolar RNA)
・低分子核RNP(snRNP:small nuclear RNP) ※RNPはRNAとタンパク質の複合体
・RNAポリメラーゼⅠ型
・酵素タンパク質(ヌクレオフォスミン、フィブリラリン、ヌクレオリンなど)


核小体の主な機能はリボソームおよびそれ以外のRNAやRNPの組み立て場です。
トランスファーRNAの加工やテロメラーゼの製造もここで行われます。


■核小体におけるリボソームの製造過程


リボソームはタンパク質の製造工場。ではそのリボソームはどのようにつくられるのでしょう?
ヒトでは、13・14・15・21・22番染色体(DNA)の短腕部に計約400個のリボソームRNA遺伝子が集合しており(=NOR)、さらにこれらのDNA領域が核小体で集積しています。ここからリボソームの製造が始まります。


①NORからリボソームRNAが転写される。
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②リボソームRNAが核小体低分子RNAの修飾を受ける。
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③リボソームタンパク質とリボソームRNAが複合体を形成する。
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④複合体が大ユニット(リボソームRNA3分子+タンパク質40種)と、
        小ユニット(リボソームRNA1分子+タンパク質33種)に分離。
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⑤各ユニットが核小体から離れ、核膜口を通過して細胞質内へ出て行く。
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⑥大小2つのユニットが合体してリボソームが完成する。


細胞内最大の酵素であるリボソームの重量の半分を占めるリボソームRNAの分子数は4しかなく、メッセンジャーRNAなどに比べて極めて長い分子であることが分かります。


■イントロンから生まれる、変わり種のRNA


真核生物のDNAにはエクソン部分とイントロン部分があります(こちらの記事参照)。一般にエクソンがタンパク質の遺伝子をコードしており、メッセンジャーRNAになる段階でカットされるイントロンはジャンクだと考えられてきました。


ところが、核小体低分子RNA(snoRNA)は、なんと、イントロンから生じます。そればかりか、エクソンの方が意味の無いジャンクになる場合もあるらしいのです。

snoRNAに関するもう1つの興味深い点はその発現過程にある。後生動物ではこれらの RNAは通常なんらかの他の遺伝子(snoRNAホスト遺伝子)のイントロンの中にコードされている。snoRNAはまずホスト遺伝子pre-mRNAの一部として転写された後、スプライシングにより切り出されたイントロンから独自のプロセシング経路を経て成熟snoRNAになる。たいていの場合ホスト遺伝子は、リボソーム蛋白質や翻訳因子などリボソームに関連する蛋白質遺伝子であるため、こうした遺伝子構造はsnoRNAとそれを含むホスト遺伝子の協調的発現という意味で納得できる。一方で4年程前にSteitz研究室において奇妙な snoRNAホスト遺伝子が見い出された。UHGと名付けられたこの遺伝子は11のエクソンからなり、10個のイントロンに9種類のsnoRNAが1つずつコードされている。一方エクソンは蛋白質をコードしておらず、細胞質で速やかに分解されてしまう (リンク

■細胞分裂時に崩壊し、分裂後に再構築される


核小体は細胞分裂のM期初期に崩壊し、分裂完了後のG1期初期に再構築されます。

(写真はこちらより頂きました)


どのようにして、消えた核小体が再構築されるのでしょう?まず、核小体に関わるRNPやRNA、タンパク質がPNB(prenucleolar body:日本語訳はないですが核小体前駆構造体ぐらいの意)と呼ばれる構造体に一度集合し、次に、それがDNAの関連部分(NOR)と引き合いながら集合していくことが最近分かってきました。NORは二倍体のヒトで計10箇所あるので、初めはそのうちの幾つかが集まって小さい複数の核小体ができ、次第に一つに集約されていくようです。そして、この崩壊と再構築のスイッチ、DNAとの相互作用には特定のRNPの形成が不可欠らしいこともが分かってきました。 (リンクなど)


このように、核小体周囲で活発に活動している主役はRNAやRNPです。
核小体は私たちの細胞の中で、生命の起源と言われるRNAワールド、RNPワールド時代の姿を最も色濃く残す場所なのかも知れません。


■核小体は卵子由来


これもつい最近のことですが、哺乳類では卵子由来の核小体が受精卵の卵割に不可欠であることが発見されました。 (リンク
実は、これと全く同じことが精子の持ち込む中心体にも言えます。つまり


中心体は精子のみから受け継がれ、受精卵の発生開始に不可欠
核小体は卵子のみから受け継がれ、受精卵の発生開始に不可欠


という相互補完関係になっている、ということです。中心体核小体その名の通り、この2つの組織が生命システムの中核的な存在であるのは間違いなさそうです。

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comments

細胞の中でついつい核ばかりに目がいきがちですが、核小体って重要な働きをしているのですね!

昔の人が核小体を「仁」と名づけていたのも、その重要を感じ取っていたらなんだと思います。

  • あおい
  • 2008年08月18日 01:57

ショウジョウバエは受精すると、まず核だけ分裂して細胞表面に並び、それぞれの核の周りに細胞分裂線を作ります。
この初期段階に仕事をしているのが、卵子から受けついだmRNAやタンパク質等(母性因子)だそうです。
受精したばかりの新しいDNAではないらしい。

核小体や中心体、母性因子(卵子にあるmRNAやタンパク質)等、DNA以外のものが受精時には重要な役割を担っているんですね?

  • yooten
  • 2008年08月18日 02:58

>あおい様 コメントありがとうございます。

「仁」というのは、儒教の一番大事な徳(思いやりや慈しみというのに近いらしい)という意味のほか、植物の種という意味もあるようです。

それから、歴代皇室男子の名前の大半にこの字が使われているそうです。言われてみたら昭和が裕仁で平成は明仁。明治は睦仁で大正は嘉仁でした。

昔の人(といっても顕微鏡はもうあるか)はなかなか鋭いですね。

  • s.tanaka
  • 2008年08月19日 00:47

>yooten様 コメント有難うございます。

最近、DNAやRNAについていろいろ調べているのですが、
どうもDNAは、細胞活動において「何もしていない」んじゃないかという感じです。

DNAを切ったり動かしたりコピーしたり、働いてるのは全て周りのタンパク質やRNAで、
DNAという核酸自体が何かやってるというのは実は殆んどないんじゃないでしょうか。

  • s.tanaka
  • 2008年08月19日 01:04
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